140文字のつぶやき投稿で主要SNSの一角にのしあがったTwitterだが、このところ不調が続いているようだ。ビジネス面で不調なのは、各メディアで報道されている通りだが、ほんとに悪いのか、またその原因がいまひとつはっきりしなかった。
最近感じたのは、TwitterはInstagramに取って代わられつつあるのではないかということだ。
Twitterの業績はほんとに悪いのか?
数字を見ると、利用者数も頭打ちのようだし、一向に利益も出せないまま、CEOが変わったり幹部が辞めたり、身売り話が出ては消えを繰り返している…
(参考)Twitter、9%の人員削減を発表 売上高は予想を上回るもMAUは伸びず
確かに、かつてライバルと言われていたFacebookと比べると売上は10分の1程度だし、利用者数や売上・利益の伸び率など成長性も見劣りしているので、SNSの競争に負けたと言われても仕方ない状況だろう。
(参考)Facebook、Q3決算発表― 売上70.1億ドル、ユーザーは17.9億人と絶好調
それでも売上高は、通年で2000億円前後はあるし(日本のベンチャーと比べると十分大きい)、赤字幅も縮小してきているようだし、それほど悪い状況なのかもはっきりしない。最近は、トランプ新大統領のおかげで話題にもなっている(笑)。
話題性では、SnapChatや日本ではLINEなどのメッセージングサービスのほうが勝っているが、SNS全体でみると、Twitterの規模感や業績はマイクロソフトに買収されたLinkedInとも同程度で、それほど悪くないはずだ。
ただ、業績は結果であって、問題は、Twitterが魅力的なサービスなのかどうかだ。
Twitter不調の原因はなにか?
日本では、Twitterの人気は高く、業績も伸びているらしい。世界の中では、日本人は特殊な使い方をしているようなので、それが反映されているのだろう。
ただ、最近気になったのは、Twitterの利用の仕方の特徴(売り)であった部分が、失われているのではないか、ということだ。失われたというよりは、利用者が他のサービスに移ってしまったのではないか。Instagramに。
Instagramは、今はFacebookの傘下に入った写真共有SNSである。豊富なフィルターを使って、手軽にオシャレでかっこいい写真が共有できるスマホアプリとして人気が出た。世界ではユーザ数はすでにTwitterを超えているし、伸び率も高い。日本では普及が遅れていたが、最近は若い人(特に女性)の間で人気が高まっているようだ。
(参考)【2016年11月最新版】直近決算発表に基づくFacebook、Instagram、Twitter、LINEの比較
これだけをもって、InstagramがTwitterに取って代わったと書くと、認識が間違っているとか、そんなの以前から分かってるよとか、いろいろ意見はあると思うが、私自身が、自分の周りで気づいたことを書いてみたい。調査した結果ではないので参考までに。
Twitterの特徴を振り返る
もともとTwitterは、
- 140文字以内の短い文章を気軽に投稿(最近は、写真・動画も可)
- アカウントは実名でも匿名でも企業でもなんでも構わない
- 1人で何個もアカウントを作れる
- 興味のあるアカウントを簡単にフォロー
- リツイートで口コミが広がりやすい
- ハッシュタグ(#)
- 投稿やアカウントの検索ができる
などの特徴があり、ある分野に詳しい人や有名人の投稿が多かった。この点では、トランプ大統領に見られるように、政治家の情報発信などには現在も多く使われている。
ただ、これらの特徴の多くはFacebookなどのライバルSNSに取り込まれてしまい、また企業のマーケティング利用への対応が後手に回るなどしたため、優位性が薄れてしまっている。
一方、Facebookは、実名登録で友人とのつながりを基本とするSNSである。投稿の表示がシステム側で制限されたり、若年層の実名利用に抵抗があったりなどしたため、それを嫌うユーザがTwitterを中心に利用するというすみ分けができていた。
友人同士のコミュニケーション目的では、匿名アカウント(友人は知っている)で、本当に「つぶやき」を発信しまくる、というような使い方が多い。Twitterは、アカウント宛にダイレクトメッセージは送れるものの、投稿は基本的にオープンであるため、不適切な発言や写真を投稿してしまい、問題を引き起こす若者も増えていた。
このコミュニケーション目的の利用は、今やLINEのようなメッセージングサービスにとって代わられた感がある。こちらの方が遥かに便利なので。
Twitterに残ったのは、匿名アカウントで、ある分野の情報を発信しまくるような使い方である。匿名であっても、リツイートやダイレクトメッセージのやり取りはできたりするので、趣味・興味が同じ人同士のコミュニケーションツールとしては便利だ。
こうして、自然とTwitterの位置づけが定まったと思っていた…
ところが、である。
Instagramは検索サービス?
Instagramは、自分で撮った写真を簡単に加工して共有できるスマホアプリ、というのが当初の認識だった。かつてのFlickrや、Pinterestと近いものである。Facebookの傘下に入ったこともあり、Facebookの友達にかっこいい写真を共有する、というような見方もあったと思う。
1年以上前だったか、若い女性の間で「ごはんを食べに行くお店はインスタで検索する」のが流行っている、というのを聞いて、少し驚いた記憶がある。
ああ、「食べログ」や「ぐるなび」じゃないんだ〜。でもどうして?どうも、食べログなどは、作られた情報のように見えて信頼できないらしい。
以前から、Instagramの投稿にやたらハッシュタグ(#)がついているなぁ、と思っていたが、そんな所で使っているとは。
確かに、ハッシュタグをキーワードで検索して、その中で美味しそうな写真を見つけて、その人の投稿をみてみると、どこのお店か分かる。ハッシュタグは、「ラーメン」のような食べ物名だけでなく、「おいしい」のような言葉でも検索できる。
もともとは、ハッシュタグと言えばTwitterだったはずなので、もうここでお株を奪われてしまっている。Twitterは、基本が「文章」だし、検索してもビジュアルものには弱い。
Instagramは写真ベースのコミュニケーションツール
写真共有SNSだから、当然そうなのであるが、もう一つ、私の回りの若い人の使い方をみて驚いたことがある。写真の再投稿(リポスト、リグラムというらしい?)された投稿をよく見ているのだ。
Twitter同様、フォロワー数を増やす手法が広まるのは分かっていたが、再投稿機能のないInstagramで、自分で撮った写真以外の投稿を集めたまとめアカウントみたいなものが増えていることに驚いた。例えば、自分の好きなアイドルの写真を集めたようなアカウントである。
Pinterestでは、Webサイトの写真をPinして自分のボードを作る、ということができたので、それと似ているといえばそう。Twitterのリツイートと似ているといえばそう。
正式な機能として実装されている訳ではないので、微妙な所ではあるが、個人だけでなく、企業アカウントでも行われているようだ。
この威力はすさまじい!
Instagramで共有された写真へのいいねやコメントのほうが遥かに楽しい。しかもアカウントにダイレクトメッセージも送れる。もう、Twitterで自分と趣味・趣向が近い人をフォローして、文字情報を追いかける必要はない。
こう見てくると、Twitterは、文字ベースのSNSで、PCブラウザベースのSNSという位置づけから、抜けられないのかもしれない。Twitterも気づいていて、Vineのような動画共有を始めたりしたが、すでに閉鎖らしい。
業績的にはまだそれなりの規模をキープしているし、いろんな手を打って来ていると思うが、利用者の立場からすると、最後の砦であった若者向けのSNSという位置づけでもなくなり利用者数は伸びないと思う。政治家の情報発信など、ある特定機能のサービスとして残るのかもしれない。
もちろん企業としては、新規サービスを立ち上げたり、買収することでも起死回生のチャンスはあると思うが。ミクシィも復活して大化けしましたし。