昨日、広報PR会社の経営者の方のセミナーに参加したときに、
「社長ブログは大事です!記者さんは、社長がどんな考えの持ち主か気になるので、必ずチェックしてから記事(取材)にするか決めてます。」
という趣旨の話があった。
「社長ブログ」と聞くと、サイバーエージェントの藤田社長のブログのように本格的なものや、大昔に流行った(?)社長のお昼ごはんをアップし続けているブログなどを思い出してしまう。個人的には、藤田さんのようにちゃんとやらなければ、会社のイメージを悪くする場合が多いと思っていた。
今は、ブログよりもSNSで発信することのほうが多いかもしれない。ブログかSNSか、はツールの使い分けの問題である。
関連してもう1つ、「コーポレートサイトは大事です!」という話もあった。顧客向けのサービスサイトは充実していても、コーポレートサイトはお粗末なまま… 記者さんは、コーポレートサイトもしっかり見るので、こういう会社はプレスリリースを出しても記事にしてもらえないかもしれない… ということらしい。
Webマーケティングをやっていると、視点は顧客側、サービス側に向きがちなのだが、実は広報PRの観点からはコーポレートも大事だということに改めて気づかされた。
社長のお昼ごはんをアップするのはOK?
社長ブログ(SNS)は、会社で運営したとしても、あくまでも社長個人のブログである。秘書や広報担当に運営させている会社もあるだろうが、ブログやSNSは個人的なツールなので、自分で言葉を発したほうが好印象だ。
ただ未だに、社長のお昼ごはんや、ゴルフ行きました〜、社員と一緒の写真などをアップしているものを見かけるが、どうであろうか?
個人的には、あまり意味がない(というか逆効果)と思うので、なぜそうしているのか聞いてみると、「取引先がよく見てるから〜」のような答えが返ってくる。SNSの場合、日常的に投稿が流れてくるので、取引先に「記事見ましたよ〜」と言われると、「よく見てる」という話になるのだろう。取引先も打合せの前にはチェックして、「社長の気分を良くしたい」という思いもあるだろう。
確かに、生存確認、コミュニケーション、という点では否定できない。だが、毎日、お昼ごはんをアップしてたりすると、結局はそのイメージしか持ってもらえない。ユニークな写真ならまだいいが、ただ毎日食べたものだけを見せられても見る側はつらい。つまり、相手(見る人)の気持ちを考えられない人だ、と自分で言っているようなものだ。
社長ブログでは何を発信すべきか?
冒頭にも書いたが、基本的には「社長の考え」を世の中に伝えるツールであろう。「考え」というと「経営方針」「戦略」のように堅苦しく考えがちだが、そればかりだと堅物に見えてしまうし、特に上場企業などは公式発表以外では語りにくい内容でもある。
ブログ/SNSは、個人的・日常的なものなので、もっと気楽に、「何に関心があるのか」、「何かに対してどう思っているのか」などを中心に、社長の「人となり」が分かるようなエピソード(お昼ごはんでもいい)を適度に混ぜる形がよいであろう。
気をつけるべきは、見る人は、その発信内容によって、「社長」「会社」をイメージ付けしてしまうということだ。素晴らしい商品・サービス、素晴らしい経営があっても、社長ブログで印象を悪くしてしまうことがある。
上辺だけよく魅せるのは逆効果だが、社長や会社を信頼してもらえるよう、きちんと伝えていくことは大切である。
誰に向けて発信するのか?
これは、難しい問題である。
既存の取引先とのコミュニケーションと考えるならば、「考え」よりもお昼ごはんやゴルフなどの「日常」を発信するほうが、親しみを持ってもらえるという考え方もあるだろう。
実は、これは、ブログやSNSのツールとしての特性を見誤っている。これらのツールの特徴は、不特定多数に広く見てもらえることにある。まだ自分/自社のことを知らない人に見てもらって、新しい関係を築いていく、というのがビジネス的には効果的な使い方だ。
親しい取引先や社内しか分からない内輪ネタは、それ以外の多くの人には、関係ない話なので、興味がない。内輪ネタを、多くの人が見るブログやSNSに発信すると、情報漏えいや不適切投稿などの事故につながりがちである。一部の人にのみ共有したいのであれば、そのための適切なツール(グループメッセージなど)がある。
社長ブログは、基本的に、これから新しく関係を築くであろう顧客や取引先などを意識して、発信していくべきである。
企業経営者ではないが、首相官邸の発信などは、社長ブログ・SNSの参考になる。
コーポレートサイトに役員の写真がない
社長ブログと関連する話であるが、欧米企業と比べ、日本企業のコーポレートウェブサイトには、役員の経歴や写真も載っていないことが多い。さすがに、社長の写真と挨拶は載せているが。
(参考:GEの役員紹介ページ)
この状況で、急に新社長に就任したりすると、写真も経歴もなくて慌ててしまう。当然、メディアも情報源が無くて困ってしまう。
写真と経歴だけで情報発信とは言えないが、企業の役員なら、社長になる可能性もある訳なので、「役員ブログ」とは言わないが、日頃から個人としての対外的発信は心がけていきたいものである。